地上の星たち —残したいホタル舞う風景—

ホタル撮影を始めたのは02年の初夏、北九州へ引っ越す直前のことでした。
初期の頃はまだフィルムでの撮影で、現像するまでは結果が分からなかったので自分が思い描いた風景を残すことができないままでした。暗闇の中にホタルの光跡がゴチャゴチャと写ったもの、背景の空が真っ白に飛んでしまってまるで昼間のような光景、目の前の風景の何を見せたいのかが不明瞭なもの…それら醜悪な写真の数々はとても人に見せられるようなものではありませんでした。

最初の4年ほどはそんな感じでしたが、月刊『カメラマン』で自分がこれまでに見たことがなかったようなホタル写真に出逢う事になります。
ホタルの光跡と小川や森、沈みゆく月などを同時に写し込んだ写真は小原玲さんによるものでした。雑誌の中で「デジタルならではの技法」と記されていたのがその当時はどうしても理解できませんでした。しかし、初めて小原さんの写真に出逢ったときの感動や溜め息…「こんなにも美しいホタル風景を撮る写真家の方がいるのか!」という驚きにも似た感情は今でも忘れる事が出来ません。

それ以来、小原さんが出演したテレビ番組、写真集、ブログなどは何度も目を通す事になります。撮影やデジタル作業などの技術面だけではなく、この人が写真で何を残したいのかを自分なりに盗んでいきましたね。
実際にお会いしての会話、フェイスブックでのやり取りの中でも一言一言から幾つものヒントを頂きました。それらは単なる技術的な事だけではなく、ロケハンのノウハウ、被写体との関わり方など、写真家としての資質といったものまで含まれます。

今でこそ自分ならではの作品を残せていますけれど、決して独りでなし得たのではないという事が言えると思います。星空写真の項と重なりますが何もない所から優れた写真が生まれるなんてあり得ません。誰か(の作品)との出会いがきっかけとなり、感化されて行く中で写真家としてのあり方を身に付けてゆくのではないでしょうか。ですから、小原玲さんはもとより、沼澤茂美さん、牛山俊男さん、中西昭雄さんにはとても感謝しています。