星空の風景  —天空を見上げて—

2005年の暮れの頃から本格的に取り組んできた星空の撮影も早いもので11年を迎えることが出来ました。

 

そもそものきっかけはホタル撮影で訪れた宝珠山の里山風景や自然、そしてその遥か上空で輝く満天の星空でした。当時、工業地帯の夜景を主に撮影していたのですが、無機質な工場の建築物に比べると筑豊の風景は何とも表情が豊かで癒されるものでした。

工業地帯の夜景から星空へと転身したのは2005年の7月…但し、その頃は自分が表現したいものが明確になっておらず、見るに耐えかねない写真の大量生産、自分でもあきれる程です。

 

そんな折に出逢ったのが沼澤茂美さんや牛山俊男さん中西昭雄さんの撮られた星空写真でした。星空の写真と言えば天体望遠鏡を使った写真を連想しがちだっただけに、一眼レフカメラと広角レンズだけで撮影されたそれらの作品はまさに自分が現場で目にしているような臨場感を与えてくれました。

「これなら出来る、自分には天体望遠鏡などの高価な機材は無いけれど、嘉穂や東峰村などの田園地帯はいつでも訪れることが出来るしとても愛着を感じている」

今考えても沼澤さんの作品との出会いがなければ今の自分は無かったと思いますし、この時が私の撮影活動の中でも最も大きな転換期でした。

 

その後は2009年の秋に郷里に戻り、岡山県の星空とホタルを二本柱に撮影を続けながら現在に至っていますが、基本的な方針は当時と全く変わっていません。すなわち、星空やホタル舞う風景を撮ることで夜が本来どうあるべきなのかを表現していきたいという事です。

 

星の写真は一般的には天体写真といいますが、私の場合はどんな風景の中で星が輝いているかに重きを置きます。撮影中は木々のざわめき、虫や蛙などの音、遠くで聞こえるフクロウやキツネの声などに耳を澄ましたりしています。そしてまた刈田や潮風の香り、山の空気を満喫したり美しい星空を取り巻く環境すべてを 楽しんでいます。それだけではありません。時にはニホンジカやイノシシ、ツキノワグマの気配に緊迫する事もあります。人工の明かりが全く届かない場所では暗闇に対するえも言われぬ恐怖心を抱く事もあります。確かに、撮影対象は星空ではありますけれど、その過程に於いて常に念頭にあるのは人の暮らし、自然や暗闇に対する畏敬の想いです。
ですから私は自分の星空写真を天体写真とは呼んではいませんし、敢えて言うなら「ふるさとの夜景写真」とでも呼ぶべきでしょう。それはもちろんホタルの写真にも言えることですし、この先もずっとこのままで続けていきたいのです。

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筑豊の里山を舞台にした星空撮影はいろいろと苦労が多かった分、思い入れも大きい。帰郷するまでの4年間の中から厳選した作品を収録した。

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岡山県での再スタート。比較明合成による星の軌跡の表現や月光下での撮影など新たな表現方法にも力を入れる。

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帰郷後3年が経過して作風にも安定感が出てきた2013年。2014、2015年は県外遠征にも力を入れるようになった。


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星空を撮り始めて10周年の2016年、そして持病の治療に専念した2017年までの作品から厳選して収録。

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2018年以降は身の回りの環境が変わった事もあり撮影そのものが激減した。そんな中からお気に入りの作品を選んでみた。

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